[コメント] D−TOX(2002/米=独)
映画を見終った人むけのレビューです。
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あいも変わらず筋肉バカなシュワルツェネッガーが何故か喝采を浴び続けた傍らで、迷走し続けたスタローンは、しかし、めきめきと演技力をつけ続けている。
冒頭の婚約指輪を買おうとするシーンはこの映画のベスト。俺も、そんな機会があるものなら、是非とも言ってみたい。
「冗談だろ?…わかった、それに車一台付けてくれたら、買うとしよう。」
なんてシーンから始まりながら、展開は一気に暗転。刑事もの、或いはサイコスリラーものとしては常道である展開も、“打ちのめされる男”を演じさせたらデ・ニーロも真っ青の演技力を発揮する一流俳優スタローンの力演により、前半は、震えるほど秀逸な出来となっている。
どうなるんだろう? と思いつつ、展開は意外な方向へ。こういう設定も初めて観た。出てきたのは、彼と同じように現場で打ちのめされ精神的におかしくなってしまった警官達が収容された療養所。そこがこの映画の舞台となる。
その後の展開は、言ってしまえばサイコ・スリラーの常道だ。決して手抜きではないものの、もはや時代遅れとなったジャンルの域を一歩も出ていない。まるで『バイオハザード』の如き陸の孤島に取り残される中、一人、また一人消えていく。犯人は誰だ。それに終始する。
takamariさんもご指摘の、最高に“地味目に豪華”なキャスティングが活かされていないのが残念なのと、何より前半のスタローンの力演がいまいち活かされていないのが残念。
スタローンが打ちのめされた彼ら、路頭に迷った若輩者ショーン・パトリック・フラナリーを鼓舞し、ひねくれたロバート・パトリックの心を解きほぐし、トム・べレンジャーとの間に友情を育むような展開だったら傑作になったかもしれないのにと思えて、残念でならない。
使い古されたジャンルで構わないんです。ただ、事件や筋を中心に据えないで、スタローンが織り成す人間のドラマを中心に据えてください。そうすれば、スタローンの映画はおのずと輝くんです。
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