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[コメント] ロミオとジュリエット(1968/英=伊)

ああ、ジュリエット……君はどうしてジュリエットなんだ……
kiona

「早熟は枯れるのも早い」との冷徹な真理を一方で吐きつつ、美しいものが腐れ落ちてしまうぐらいなら、いっそ失われてしまえ! とばかりに、うら若き二人の精神の疾走を許した四大悲劇以前のシェイクスピア。美しいものが美しいまま終わるとすれば、それは果たして悲劇なのだろうか? 夢物語に過ぎないにもかかわらず、強烈な光を放つ、肉体の必然に堕す以前のお人形さん同士の恋物語。死をもってそれを永遠にしてしまう情熱の、ナイフの如き眩しさよ!

ところで、シェイクスピアに映画文法は通用しない。何よりも映像に語らせるべき映画というメディアにあっても、この豊饒な台詞から逃げることは許されない。この映画はモノローグに近い台詞の数々を、余すところなく役者に直に語らせている。オリビエの『ハムレット』やポランスキーの『マクベス』が多くのモノローグを心内表現としてナレショーンにしてまっていたのは映画的だった一方で、芝居に対する敗北を意味していた。その点だけでも、この一本は勝っている。ロミジュリはシェイクスピアの戯曲の中で、(四大悲劇等、後期に比べて)重要な作品では決してないと考えるが、この映画はシェイクスピア映画の中では極めて成功した例だと感じる。

(評価:★5)

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