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[コメント] 用心棒(1961/日)

この映画を面白いと感じられなくなるぐらいだったら、俺に老後はいらんばい。
kiona

 弱肉強食社会をパロディー化した一つの相似体が、一つの物語の中に丸ごと入っているってのが凄い。他にも、多対一に説得力があるだとか、此処のキャラクターそれぞれに深みがあり、かつ役割が明瞭であるとか、凡庸な感想を挙げていったら、それこそきりがない。でも、それらは、実のところ、たった一言でもまとめられる。それは、この映画が徹頭徹尾、“つくりもの”であり、嘘であるということだ。

 自分はまだ二十代半ばだが、しかし、おこがましくもエンターテイメントの虚構性に、時に疲弊している自分を見つけるようになってしまった。“それはないでしょう!”と言ってケタケタ笑っていられたのが、“…”でチャンネル変えてしまうような雰囲気に、理屈ではなく、感覚的に飲み込まれつつある。一昔前は絶対に気取っているだけだと片付けていた大人の感覚ってヤツが、だんだん見えてきてしまっているのである。

 だが、この映画を見ると、やっぱり“つくりもの”はいい、そう思える。“つくりもの”とは、人の心の中の願望という確かな“リアル”なのだ。だとすれば、その“つくりもの”への欲求が全く消滅してしまうというのは、人生に対する欲求そのものが消失することを意味するのだと思う。ならば、他のどんな映画よりも秀でたこの映画の“つくりもの”の魅力を見失わない人間でいたい。

(評価:★5)

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