[コメント] 英国王のスピーチ(2010/英=豪)
シェイクスピア(言葉)の国が放った会心のエンターテイメント。どのシーンにも格調があり意味もしくは機知があり滑稽さが介在している豊かな作品。王族にたいしても個人主義をつらぬくローグのキャラクターは、いかにもシェイクスピア(変人)好きのイギリスらしい。
ただ、いまひとつ物足りなかった。
他人のこさえた原稿読み上げるだけのことやんけ、という身も蓋もない感覚がどうしてもぬぐいきれなかったからだ。
王の立場や重責、国民の前でスピーチをすることが何故そんなに重いことなのか? あのスピーチがどれほどの意味を持ったものだったのか?
その辺、映画はあんまり嘘にならないように慎重で、ヒットラーの映像とか見せはしても王の苦悩ともどもさらりと流してしまっているから、クライマックスの興奮もほどほどだ。
こんな映画とはくらべてはいけないぐらい低脳でろくでもないと世間から思われている『インデペンデンス・デイ』という映画があって、でも、かの大統領の演説シーンはまじめな皆さんが血相変えてお怒りになるほど恥じらいがなく、ぶっちゃけ興奮する。ある意味では映画という装置の暴力性、フィクションの力を体現しているのは圧倒的に『インデペンデンス・デイ』のほうだ――などと言えば、映画好きの人々から「解ってない」と言われてしまうのであった。
たとえば、シェイクスピアなんかは、嘘つくときはエメリッヒ以上に大それた嘘を平気でついてたんだけどね。
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