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[コメント] 恋の罪(2011/日)

女なら誰だって秘めている“さが”に翻弄される女たち。いずみ(神楽坂恵)は、頭の弱い女が場末の色街にまで堕ちていく一つのモデルだ。和子(水野美紀)は、頭が弱くないゆえに堕ちきれず、不倫の泥沼から抜け出せない。一方、頭が強いゆえに破綻している美津子の造形には、冨樫真の凄みが隠し切れない欺瞞があったようだ。
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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美津子にとっての“辿り着かない城”である実父は、娘からの求めに決して応えなかったがゆえに“本物”だったが、いずみにとっての“辿り着かない城”である夫は、どうだったか? 妻の求めに決して応じなかった点は確かに同じだが、彼は外で汚らしく発散し、家庭の衛生は保ちたいだけの、嫁なんぞ家具の一つぐらいにしか考えていないゲス夫だった。

美津子の父親は、娘のためを思えばこそ、そんな求めには当然応じられなかった。そんな父の心中を美津子は、当然知っていたはずだ。でもそれによって彼女には空洞ができてしまったというアイロニーは、まだ受け入れられる。だが、受け入れがたいのは、美津子がいずみに同調を求めた点だ。おまえの“辿り着かない城”は“本物”だったろうが、いずみの“辿り着かない城”は腐れた“偽物”だったのだ。おまえは、彼女がそれを知らないのを嘲笑いさえした。笑って奈落に突き落として悪魔を気取るのはいいが、おまえの“空洞”と彼女の“喪失”は比べるべくもない。何をおめおめ同調もとめてんだよ、いくらなんでも虫が良すぎやしねえか?

力作だとは思うが、園子温、あんた、ちゃんとこの欺瞞に気づいてたか?

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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