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[コメント] アナと雪の女王(2013/米)

ディズニーは行く、物語を踏みつぶして。
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







姉妹がドア一枚で引き離される枷が良いと思って見始めたもんだから、いざ戴冠式で再会となったくだりで、あれほどエルサとの再会を待ちわびていたアナの心理がもう姉ではなくイケメンとの出会いに推移していたのを見て、まず、あれっ? て思った。まあ、そういう年頃だしリアルと言えばリアルなんだけど、じゃあ枷は何のためだったのか。その後も話は色々な枷やルールづくりを提示しては自ら反故にする狼藉を繰り返しつつ、それでも映画は疾走する。迷いなど一縷も無く、平然と突っ走る。両親殺すくだりなど一行も説明する気がない圧巻の描写で、「文脈とか何とかゴチャゴチャ言いやがると殺すぞ」と恫喝されたような気さえした。俺なんか、絢爛豪華なお祭り映画でもキャラクターの心理を追うことから離れることができない土着民族なもんだから、ふつうにキャラクターそれぞれの立場とか考えちゃんだ。特にこの映画、一カ所であれ? ってなっても、ド級のプロたちによる絵づくりが凄まじいし、小ネタの技巧とか釣瓶打ちなもんだから、傍観も俯瞰もきかないんだ。そこへ三角関係とか持ち出してくるもんだから、どうすんだ? どうすんだ? と割と真剣にぶらさがっていると、酷い目に遭わされるんだ。そう、あの王子様の変節だ。いやあ……それやっちゃんだ。もう、この上なくゲローフ・マイ・エアプレーンで気分はすっきり。ぐうの音も出ない。何となればすべてを子供向けで片づけられる免罪符もついているんだから、野暮は百も承知なんだけど、あの、、13番目の王子にも事情とか悲哀とかあると思うんだ。ヅラ公爵だって、色々大変だと思うんだ。でも、そういうのは一切まかりとおらない光の王国。国王たるネズミの暴虐など本当に阿鼻叫喚で、見ましたか、あの短編を? スクリーンを、アナログとデジタルとを縦横無尽、天使の顔して哀れな悪役を何度も何度も、いったい何万回殺せば気が済むんだよ? それも、超絶技巧のオン・パレードで! 何ていうグロテスクだ。ふつうに、これ、いじめ助長しないのか。大丈夫か。て言うか、何で自分が子供の頃からディズニー嫌いだったか思い出させられた。見ていて自己投影しちゃうのが、何となくなんだけど、でも確実に悪役のほうで、自分がいたぶられているようで、きつかったんだ。何でそうだったのかと考えると、たぶん、その時分にしては自分の欲望に自覚的だったからだと思うんだけど、その結果、怪獣映画ばっか見てたのか、最悪だな。最悪だとは分かっちゃいるんだけど、今も私にとって物語は闇から生まれて闇を引きずり行くものなのです。

そんなわたくしめが何で今回、この映画を見たかと言うと、5歳と2歳の愛娘が映画館デビューに『アナと雪の女王』を所望したから……! なのです。ちょっと待ってくれよ、人生初の映画館だろ? それが、よりにもよってディズニー? いいのか? それで、いいのか?? 割と苦悩すること約1週間、ディアボロなパパは思った。(日曜にかったりいな。なんか混んでるらしいしな。行くなら世間がサッカーとかどうでもええ行事に熱中してる午前中だよな。あれ、でも、その時間帯って、たしか……)「えっと、君たち……大好きなプリキュアと重なって今週は大好きなプリキュアが見られないけど、それでもいいの?」

長女「いい!(即答)」

次女「いい!(プリキュアとか、まだ、どうでもいい)」

そうか……そこまでの覚悟であるのならば仕方がない。嫁と、それからバアバまで連れて五人で行ってきたよ。次女は、それでももったもんだと思うんだけど、終盤のトロールのどんちゃん騒ぎに恐れをなして嫁と出ていった。俺は、長女をだっこして最後まで見た。長女も、怖がっていた。怖がっていたんだけど、“彼女たちの怖い”は当然“俺の怖い”とはまったく別次元で、本当にただ純粋に雪が氷が、姉妹がどうなっちゃうのかが怖くて仕方がなかったんだ。カハッ……それに比べたら、パパやママのうんたらかんたらなんてゴミみたいなもんだ。君らのパパとママは、とりわけうるさいんだ。ときには、君らそっちのけで。ずっとそうだと思うけど、ごめんな。本当言うとパパも、エルサが――氷の女王が覚醒する瞬間は素敵だと思ったんだ。「覚醒」って分かるか? 邪神とかがおっきするのをそう言うんだ。あのシーン、前の日にジイジがスマホで動画見せてくれたよな。でも、豆粒みたいだったろ? 映画館で見たら、ぜんぜん別物だっただろ? 映画は、映画館で見なきゃダメなんだ。だって、お城とか怪獣とかでっかいからな。そうだよ、パパもユーチューブのチラ見じゃ、「ありのままの自分」とかどいつもこいつも自分自分て反吐が出るとしか思えなかった。でも、映画館で見たら、ずっとつらく寂しく自分を閉じこめてきたエルサが大人になってようやく自分を解き放つっていう物語が見えた。その覚醒から築城までを超一級のスタッフが全カット完璧にしあげてた。そいつを映画館で見せてやれて良かったと思う。実はパパ、君らに折りよいタイミングでリマスター『ゴジラ』がかかったなとか思ってたんだ。でも、連れてかなかった。だって、そっちはパパのほうが夢中になっちゃうからな。まあ、いいさ。あのな……あの、氷の階段織りなして駆けあがっていく王女は、君らだ。君らが感じたそのキラキラは、掛け値なしだ。あとで訊いたら、実は王子様の裏切りとかよく分かってなくて、て言うか保育園のおともだち全員で王子様が悪い人だって気づいていなかったのにはちょっと驚愕したけど、君らはある意味ディズニーの思想さえふみつぶしてキラキラなんだ。それでいい。ずっとそのままでいられたらと思うけど、大きくなれば、いろんなことを突きつけられる。いろんな奴がいろんな事を言ってるのを聞いたり目にしたりするようになる。こんなふうにだ。そいつが、ときには嫌なことだったり、惑わされるようなことだったり、傷つけられるようなことだったりするだろう。でも、それでも、自分が本当に信じたいものは、信じろ。周りの誰一人理解してくれなくても、信じろ。是が非かで語りきれることなんて、一つも無い。是が非かで語りきれる映画だって、一本も無い。自分の歌を歌え。世界は闇で満ちている、君が輝くために。でも世界は何も変わらないだろう。それでも夢に羽つけて飛ばせ、どこまでも――なんてな、パパの信じる人たちも歌ってるよ。

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