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[コメント] さらば友よ(1968/仏)

デラシネのヤケクソが身に染みる。
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







女に義理があるわけでもなく、金が欲しいわけでもない。ただ、戦場というやむにやまれぬ状況下で誤って殺しちまった人間のための、といっても頼まれたわけでも何でもない、自分で勝手にそうと思い込んでいるだけの訳の分からない、弔い?

ドロンの行いは、端から見ればヤケクソ以外の何ものでもない。けれどもドロンはそれをせずにいられない。常軌を逸しているのは自分でもわかっている。おまけにムサイ男がこれまた訳もわからず付いてくるし、事はちっとも上手く運ばない。ついてきたブロンソンにしたって、ご同様だ。泡銭稼ぐために変態相手のけったいなパーティを開いてはちんけなこそ泥行為、挙げ句の果てには見つかって、乱闘騒ぎをどうにか抜け出せば、腐れ縁のあんちゃんに突き当たり、これも縁とつきまとってみれば、得にもならない苦労だったと判明した上、閉じ込められる始末。

「なにやってんだよ、おまえ……。なにやってんだよ、俺……」

どこにいっても馴染めない、何をやっても上手く行かない――筋金入りの根無し草が唯一抱えていた負い目、奴にしかわからない想い、それが全ての原因。でも、ドロンにとっては、守らなきゃならない一線だった。根無し草だからこそ大切にせずにはいられなかったちっぽけな心。不幸なことに、同じ根無し草のブロンソンには理解できてしまった。そして、気付いたときにはもう切り捨てられなくなっていた。

誰も何も語りはしない。こんな風に言葉にしてしまうのは野暮なことだ。だから、ただ叫ぶ、イェー!

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] ハム[*] movableinferno[*]

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