[コメント] 真夜中のカーボーイ(1969/米)
この胸掻きむしる痛恨の懐メロ
世を儚みテロリストになることを決意した少年は、真っ赤なオールドギターを背負い、サボテンを抱え、猫のバントラインを引き連れ、映画館を爆破しに向かった。爆弾設置にまんまと成功し、あとは逃げるのみであった少年は、しかし、たまたま上映中だったこの『真夜中のカーボーイ』に、自分で仕掛けた爆弾のことも忘れ、見とれてしまい、もろとも吹き飛んでしまった。
同じく少年だった俺は、彼の人生をコメディーだと思い、嘲笑い、彼が見とれた映画とはどんなものだったのか、自分の目で確かめに行った。…こんなにお寒いコメディーはねえと吐き捨てたのを覚えている。負け犬は負け犬にしか見えなかったし、田舎者は田舎者にしか見えなかった。
…究極の悲劇が行き着いた先にあるもの、それが喜劇だ。
チャップリンの名言が名言だと理解できるようになったのはいつ頃だったろう?一笑に伏した少年が、ぼんくらの自分よりも、よっぽど大人だったのだと気付いたのはいつ頃だったろう?ちっぽけな夢に生きようとする田舎者の締め付けられるような孤独や、目も当てられないような人生をそれでも生ききる負け犬の強さに、この胸を掻きむしられるようになったのはいつ頃だったろう?
人生は続いていく…その重みに押し潰されそうになると、この懐メロが聞こえきて、俺は歯を食いしばる。
(注:「サボテンとバントライン」…Words by大槻ケンヂ/Performed by筋肉少女帯の名曲です。第一段落はその歌詞の内容を要約したものであり、引用ではありません。)
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