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[コメント] A.I.(2001/米)

幼児期の母親への執着と人間嫌いが空想世界の夢物語に転嫁され続けた・・・俺が思う所のスピルバーグの作家性。しかし、彼は、それが作家性で無いふりをし続けている。そこが、どうにも納得いかない。
kiona

 反吐が出るほど人間が嫌い。母親を生き返らせて、他の奴らは滅ぼしてしまいたい!・・・これがこの映画の主題です。

 SFでも、ファンタジーでもありません。これはスピルバーグのマグマです。

 『E.T.』の頃にはまだ許せる程度にしか噴出していなかったその彼の作家性は、長年、彼自身により作家性扱いをされず、抑圧され続けたがために、ここに来て、鬱屈したマグマのように彼の中でのた打ち回っているのだと、俺は思います。

 にもかかわらず、まだ、スピルバーグは、その自分の作家性を、SFやファンタジーの包装紙にくるもうとし、その醜態は、この映画にあって、もはや観るに耐えないほどです。

 その人間嫌いは彼個人のものであるにもかかわらず、それを公の社会批判や人間批判に転化しようとするいやらしさ。その舐めるような演出により、彼の“私”は“公”に見えてしまうというのが怖いところ。そのせいで、どうして観客の中にいる多くの母親たちが、心を痛めねばならないのか?

 何より、ロボットに人格を認めるべきかどうかという最も重大なはずのSF的主題が、ものの見事に圧殺されているのが、不満で仕方ない。その議論が無い以上、あのデビットはスピルバーグの分身、彼の幼児願望の体現以外の何者でもありません。そんな個人的なものを見せびらかしながら、自分で責任を負わずに、SFの陰に隠れ、キューブリックの陰に隠れて、やり逃げ。

 母親への執着と背中合わせの人間嫌いが作家性なら、それはそれだ。少なくとも俺は、それ自体を否定はしない。できない。むしろ潔く世に問えと言いたい。いったいどんな怪物が出てくるのかという期待も実はある。もし切腹せざるを得なくなったら、万感の思いを込めて介錯してやりたい。

(評価:★1)

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