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[コメント] ターミネーター2(1991/米)

T3との比較論。T2は、T1000を登場させることにより、殺人マシーンの追求に関してT1から独立したアイデンティティを獲得しえたが、T1が持っていた潜在的なテーマを挟殺してしまった。
kiona

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







T1はシュワルツェネッガーと殺人マシーンの無機質さを融合したホラーからアクションを醸成するという、アクロバティックな演出が売りの映画だった。SFというより、ホラーであり、アクションだった。その観点から観れば、T1000の登場だけで優れた続編とするのが妥当なのかも知れない。

しかし、T1が演出のための初期設定(つまり、ターミネーターという存在の言い訳)として持ち出したに過ぎなかったスカイネットによる攻撃と人類の終末というネタ、そしてタイムトラベルが表象する「運命の重さ」というテーマはそれだけで過分に魅力的で、仰々しいアクションに見慣れてしまうに従い、自分の興味はそっちにシフトしていった。

この映画も、途中まではそれを描いていた。キャメロンも、むしろT1の時よりも強くそれを自覚し、妄想やアサイラムにおける暴挙のシークエンスをもって、サラ・コナーの苦悩に丁寧に反映させていた。だが、肝心の結末は、その前半から中盤を大いに裏切るものだった。

「T800は愛を獲得し、自己犠牲をもって、人類を救った」という、この映画の結論をもってT2を傑作とする大向こうの見方に、自分はまったく共感できない。人類全体の終末とそして「運命の重さ」を、T800の即席のヒロイズムとサラとジョンしか共有しえないセンチメンタリズムが押し流してしまうなど、本末転倒である。

もし、愛を獲得したT800を一個の生命と認めるなら、ジョンとサラは何故彼に「生きて、ともに戦え」と言えなかったのだろう?

T3レビューに続く。

(評価:★3)

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