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水那岐さんのコメント: 更新順

★2夢幻紳士 人形地獄(2018/日)眉目秀麗な悪魔的青年…をまず探してこないとこの物語は始まらなかったのではないか。ミステリーというよりは怪奇とブラックユーモアの世界なのだから。その点監督は乱歩ファンなのかそれらしく仕上げているが、舞台ならぬ映画ゆえ映画的なカンの無さは致命的だった。場面転換は下手だし、舞台俳優は巧くとも映画的演技の素養が皆無だというのが惜しい。[投票]
★4電信柱エレミの恋(2009/日)何とも淡く儚げなつながり。しかしそれが性愛情報の氾濫する現代より、さらに数十年を遡る時代の物語と知り、自分たちは甘い夢に浸る。それを後ろ向きな時代錯誤と誰が笑えよう。電柱と人間の恋という、実にロマンティックな題材は創り手の粋な計らいにより、静謐で言葉に表せない心の交歓を現出させるのだ。[投票]
★1たこ焼きの詩(2015/日)お話にならない。コテコテの母子感涙ドラマを期待していたが、正直なところシロウトが撮った粉もん屋とテレビ局のコマーシャル映像でしかなく、ストーリーはお添え物ですらない内容薄弱ぶり。大阪弁のうまさはよく判らないものの古和咲紀は子役としてよくやっていたが、もっといい才能の発揮場所はいくらでもある。そちらに期待したい。[投票]
★3モキシー 〜私たちのムーブメント〜(2021/米)観ていて愉快ではないのは、ヒロインの思い上がり。目立たない存在から他者を糾弾する立場に移った途端、個人を恫喝し親友の声を無視し家族に反発する。こういうところから内ゲバは現われ、セクトは分裂するのだ。ラストは無理やりの言い訳としか思えなかった。[投票]
★3リズと青い鳥(2018/日)凄く魅力的な話。希美は輝かしいばかりの子で、陰鬱さを隠さないみぞれが絶対的に手放したくないのが非常によく判る。それだけに、後半の物語が童話の寓意をただ辿っているだけなのを惜しむのだ。 [review][投票(1)]
★3何もかも狂ってやがる(1962/日)現代では珍しすぎるくらいの生真面目な不良。教師に礼を尽くし、女には手を出さず、自分をどん底に陥れたエセ秀才を袋叩きにすることもない。俺の生まれた頃には、こういう正義漢のやさぐれ者が大勢いたのだなあ、などと騙されはしない。それにしてもシロウト少年の主人公と聞いたが、のちの麦人だった。デマで当然の演技力だ。 [投票]
★3いちどは行きたい女風呂(1970/日)小百合のパートナー転落の図。とはいえ等身大のダメ男に浜田光夫が脱皮するのにはいいチャンスだったかも。喜劇俳優としての方が生き生きしている。ほか、旬の夏純子が観られるのは嬉しい。タイトルの「女風呂」は生ぬるくただただ冗長。LSD、「家畜人ヤプー」と当時の性文化は知れ、むしろピンク喜劇としてけっこう贅沢。 [review][投票]
★3わんぱく戦争(1961/仏)共和制と友情と誇りを重んじるフランス少国民奮戦記だが、ラストの「救い」は妥当とは言い難い。『ウルトラQ』の「カネゴンの繭」などのOPはこの映画のオマージュだろう。ちなみに令和リマスター版のフルチン戦争は大幅にカットされ尽くしている。醜い時代だ。 [投票]
★3カミーユ(2019/仏)「溺れて死ぬ子らの前で報道は有益か」という命題がある。中央アフリカに拘ってウクライナへの上層部の転属命令を断り、あくまで同じ国で撮り続けた彼女は、「ここにいると落ち着く」と吐露した。難しい話だし、自分もその行動の意味を見い出す者には違いないが、「溺れて死ぬ者」の怒りも理解できるのだ。このアンビバレンツを提示しつつ、淡々と撮られたこの作品にも回答はない。[投票]
★3RE:cycle of the PENGUINDRUM 劇場版 輪るピングドラム [後編] 僕は君を愛してる(2022/日)いささか詰め込み過ぎ。感涙を誘うエピソードが頻出するテレビ版の後半のダイジェストとはいえ、ここまで名場面続きで見どころ続きでは泣くに泣けず、逆にジェットコースタームービーのようで失笑すら誘われてしまう。やはり不必要な見せ場を削ぎ落す勇気は必要だったろう。[投票]
★3まるだせ金太狼(2020/日)映画というよりはお下劣コントだが、『変態仮面』はこれくらい開けっぴろげで陽気、かつ明朗にやって欲しかった。「必殺技」ならぬ「恥っ殺技」は、観客が喜ぶと確信しつつ『けっこう仮面』をトレースしたのが正解だ。理屈を排し、あくまで下品さを正義として描くこと。この信念は正しい。まあ、正しかろうとバカなんだが。[投票]
★3暴太郎戦隊ドンブラザーズVSゼンカイジャー(2023/日)全くのドンブラ目当ての鑑賞だったのだが、ゼンカイジャーも悪くはない。明朗なドタバタで、子供の愉しめる一片の影もない世界だ。しかし、商業的な意味以外にこの水と油の2作品を結び付ける理由は一切ない。 [review][投票]
★2青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない(2019/日)すげえ卑怯。こんな可愛い子たちのハーレムで彼女らの運命をもてあそんで。何度も泣きそうになった老い先短い豚ジジイの気持ちをどうしてくれる。(2023年6月28日付記) [review][投票(4)]
★4リベリアの白い血(2015/米)貧困に喘ぐ母国で、家族のため働き続ける寡黙な男。リベリアという国の成り立ちを見れば、彼はリベリアの希望なき国民のアレゴリーだと知れる。「白い血」とはゴムの木が流す樹液であり、それを集め続けるのが彼の人生だ。 [review][投票]
★3ハニー・シガー 甘い香り(2020/仏=ベルギー=アルジェリア)少女映画によくある、性愛への憧れと無軌道な実践を描くような作品傾向のように誤読させる演出が続くのは不可解。そのほうが観る気を起こす観客が増えるとみてのことかも知れぬが、これは真面目な人権映画なのである。妙なカムフラージュのために時間を浪費しているようだ。主演のゾエはイザベル・アジャーニの姪。イザベルより親しみやすいか。[投票]
★3アリスの空(2020/仏)人形アニメなども交えながら、極力淡々と進む愛の物語。突き放したように描かれるそれはあまりに平穏で盛り上がりに欠けると感じたが、それは今も光明を見ず、あるいは異郷に逃げ延びて紛争の行く末を見守る難民のためだったとも気づく。我が国ではウクライナの一件で世界の状態に目を向けた向きも多かったようだが、世界はつねにこうだったのだ。[投票]
★1三大怪獣グルメ(2020/日)詰めが甘い。この映画で求められるのは人間関係のドラマじゃなく、怖くて、それ以上に食欲をいたずらに誘ってやまない怪獣の造形と演技の筈だ。久住昌之が監修に名を貸しながら、映画に紹介される料理のヴィジュアルは実物の海鮮料理に遠く及ばない貧弱さなのだ。怪獣造形の杜撰さには目をつぶっても、美食映画として全く機能していないのは許容できない。[投票]
★4天の高みへ(1977/伊)単なる涜神のパノラマと舐めていたが、この衝撃度は高い。トーマス・M・ディッシュの某小説の雛型のような凄惨さ、そして最後に人々の前に現われる存在の皮肉。ルイス・ブニュエルとも一味違ったミニマムな崩壊に眼を奪われた。 [review][投票]
★1君は彼方(2020/日)当初は新興宗教アニメかと肩を落としたが、そうではなかった。この監督はRPGゲーマーだ。無駄なキャラは1人もいず、順番通りに彼らに逢ったり、彼らの力を借りたりしながら攻略することで何回かめに問題をクリアすることができるのだ。こんな作劇ができる時代がやってくるとは思わなかった。ある意味衝撃作である。[投票]
★3ヨーゼフ・ボイスは挑発する(2017/独)芸術家を名乗りながらも、むしろ社会的アジテーターの色彩が強いボイスの言行録。この時代に生きたアーティストとして御多分に洩れず左派的なイメージが色濃く、実際のところ彼の芸術は手段であったように見受けられた。前衛としてのダイナミックな作品に食指が動く自分は彼の寡作をこそ惜しむのだが、擦れ違う価値観は如何ともしがたいと知らされる。[投票]