前半はほとんど業突く張りオヤジの欲望全開。チュンが天才肌なだけに、父に従わないのも無理はないよと思ったのだが、不潔を友としてワガママ放題のヴァイオリンの先生、派手好きだが実は一本気なリリ姐さんなど、チュンをめぐる人々がコメディタッチで楽しめた。この時点ですでに作り物臭い味わいではあったのだが、コメディタッチゆえに気にならなかったのは事実だ。

しかし後半、チュンがユイ先生に師事するに至っての話の強引さには引いてしまった。先生がどんなつもりで話したかは知らないが、「きみの父親は、音楽家夫婦がヴァイオリンとともに捨てた赤ん坊のきみを、拾って音楽家として育てたような気がするよ」なんて話を、国際コンクール前でナーバスになっている教え子に普通話すものだろうか。これで動揺しない子供のほうがむしろ不気味だ。その上、チュンが些細なことから質屋に売ってしまい、買い戻そうと思ったときには売れてしまっていた父のヴァイオリン…その買い手が実はユイ先生で、優勝したらご褒美に与えようと思っていた…いくら何でも、ここまで性根の卑しい先生に描いてしまうのはどうだろう。この作為が前にあっては、ラストの父子のドラマに素直に拍手は送れない。世界的名声より父の愛をとるのは、やはり少年のまごころゆえであって欲しい。このあたりの描き方が、Ｂ級ドラマの強引さだな、ととれて、自分には感動にひたる気持ちにはなれなかった。