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[コメント] HINOKIO ヒノキオ(2005/日)

一見口当たりのいいお菓子のような愛すべき映画とも映るが、この監督が監督経験が不慣れなせいか、イベントは唐突でエキセントリックに過ぎ、大人の観客から見れば困惑を誘われる。皆さん、監督の未来を考えて甘く採点しておられるが、自分にはこの感覚はちょっと許せなかった。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







特に主人公の転校当時のジュン、彼女らと仲良くなってからのスミレの残酷さは恐ろしくてたまらない。今の子供たちはあそこまで過酷な通過儀礼を通らないと友人になれないのだろうか?特にスミレが、超人的ハッカー能力を駆使して主人公の父の会社の正体を暴露し、苛めるあたりは「そこまでするかよ!?」と慄然とした。その後この問題は忘れられてしまうが、実情はどうだったのだろう?

それと、子供だけに通用する神話的現実については、ここまでゲームと現実を混同するようなマネを肯定していいのか、とまたしても空恐ろしくなってしまった。子供たちの「儀式」については、楳図かずお『わたしは真悟』の描写を想起させたが、あれは作品の根幹にかかわる「奇跡」であった。対してこの映画のなかで、「煉獄」というゲームがなぜかあまりにも大きな影響力をもち、ふたりもの少年少女の命を救ってしまうのは、御都合主義を通り越して気が遠くなるような感覚に襲われた。こんな映画人がのさばるようになったら、また猟奇殺人事件でも起こって、馬鹿なマスコミが「ゲームがこの犯罪を起こさせた」などとしたり顔でほざき始めた時、誰が弁護してくれるというのだろう。これはおのれの首を締める行為だと、監督に進言する人物はいないのか。

そういう電脳世代の不気味さたっぷりの映画であるから、作中で育まれる友情、さらには『キューポラのある街』くらいから幾度となく繰り返された列車内外の友達同士の別れにも、素直に感動できなかったのは口惜しい。そして、とどめに主人公たちの再会のシーンでは、CGで冒険したい気持ちは判らないでもないが、ふたりを太陽系を通り越して遠く銀河系の彼方から眺める、などという暴挙に出てしまう。…やっぱりダメだ。自分にはこの作品を弁護できない。監督には、一度特撮を全く感じさせない地味な作品を撮ってから、もう一度ファンタスティックな作品に戻ってきてほしい。今のままでは中高生にも呆れられるような作品しか撮れないぞ。本当に。

(評価:★2)

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