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[コメント] 青空のゆくえ(2005/日)

皆のなかで、例外的に裏表なくいい奴であり、他人同然のクラスメイトの仲を取り持てた中山卓也がいたからこそ、この物語はハッピーエンディングを迎えられたのだろう。彼の存在はバラバラのクラスの中でそれだけ大きかったのだ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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この作品を観始めて痛感したことは、自分はこの中学生たちの中にノスタルジーを求めることはできないな、ということだ。男女問わず、二言目には「るせぇよ」を連発する。女の子の言葉遣いの悪さは皆さんレディースかと思えるほどだった。だから委員長を見て、「ああ、やっとほっとできる女の子が出てきたな」と一息ついた。…もっとも、彼女は後半で胸のなかの黒さを露呈してしまうのだが。

しかし、それと同時に他の中学生たちの良さが見えてくる。少しずつ見えてくるそれは、明らかに転校する中山の引き出してくれた良さだった。恋敵同士は手を取り合い、帰国子女は諦めていた日本人生徒との友情を暖め、登校拒否していた男子は応援してくれた中山以外の級友にも心をひらく。そう、それらはすべて中山のプレゼントなのである。

中山をめぐって、クラスメイトたちは初めてひとつになり、未来を語り合える仲になる。それはいいのだが、今後彼が取り持った生徒たちの団結は続いてゆくにせよ、その恩人が他ならぬ「彼」であることを覚えていられるだろうか、ということだ。爽やかそうな演出にごまかされそうだが、このドラマはいわば「救世主」とでも言えそうな理想的少年なしには成り立たなかったところに、致命的な弱さがある。10年後、タイムカプセルを開くために彼ら全員は集うことが本当にできるのだろうか?

(評価:★3)

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