[コメント] 明日の記憶(2005/日)
若い観客には無縁のファクトと笑い飛ばされそうだが、この作品から自分の世代が受け取る恐怖と悲しみは並大抵のものではない。渡辺謙の焦りはそのまま我々の焦りでもある。映画に明日の活力を見出すタイプの方は見ないがよろしい。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
正直、『私の頭の中の消しゴム』の模倣作・アダルト版かと思っていたのだが、とんでもない。根っからの会社人間でダイナミックな人柄である渡辺謙は、ゆっくりと「会社に不必要な人間」そして「社会に不必要な人間」に変えられていく。これは尋常な恐怖ではない。この不幸なビジネスマン役を初主演の渡辺が演じるのだが、自分の嫌いなタイプではあっても精力的に働き、部下に檄を飛ばす男であったのが、次第に生ける屍と化してゆくプロセスはあまりにも悲しい。そして、変わらぬ愛情で渡辺を支えようとした樋口可南子が、ラストシーンではすっかり忘れられている事実に呆然とさせられる。愛情は、判り切ったことだがオールマイティの妙薬ではない。その現実を叩きつけられるのはあまりにも残酷だ。
どんよりした気分にさせられるのも映画体験だが、この経験は子供たちには味わわせられないカテゴリーのものである。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (6 人) | [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。