[コメント] オペラハット(1936/米)
新作となって公開された『Mr.ディーズ』はやはりこれを地でいく脚本でやるのだろうか?「変奇人」のひとりとしては興味のあるところだ。
この映画のなかで、主人公を陥れようとする弁護士側の証人として、「高名な医師」がシロウトにも判りそうな陳腐な躁鬱病の説明を図つきでやるくだりがある。それゆえ、主人公は禁治産者たるべきことなのだと。この頃のアメリカはその程度の認識だったのだな、と改めて思わされた。
自分もまた躁鬱症である。普通の会社向けの性格ではないので、長いあいだ漫画描きをやっていた。そうしている間に、某出版社の担当と取材旅行をする機会があり、自分の秘密を打ち明けたことがある。彼は言ったものだ、「へえ、じゃあ殺されないように気をつけなくちゃ」と。冗談ごとでなく、主人公よろしくそいつの頬を張り飛ばしてやりたかった…気の弱い自分は、「そんな事はしませんよ」と自嘲的に苦笑しただけだったが。しかし、躁鬱症患者すべてが危険視されるのなら、今時精神病院がいくらあっても足りないだろう。アメリカでも、日本でも。
気にいらない奴は片っ端から張り飛ばし、時折は奇妙な行動もとるディーズに躁鬱の気があるのは、あながち間違った診断とも思えない。だが、この程度の「変奇人」なら今時そこらをウロウロしている。粗暴なのはいささか問題ではあっても、彼が遺産を有意義に使うのなら、これを阻む法廷もないだろう。
さて、現在「人権大国」(少々行き過ぎの観がなきにしもあらずだが)となったアメリカではヒットしたというリメイク版、どこがどう変わっているか、ぜひ観てみたいものである。
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