言ってみればこれはスポ根ものの変形である。『ガラスの仮面』などの同類であり、ゆえに天性のピアニストと努力型秀才の激突が見せ場になる。だから長期間にわたるドラマこそが適切であり、正直映画向けではない。修平と海の友情は軸とはなっているものの、例えば「便所姫」のエピソードなどもっと深く掘り下げられると思うのだ。教師・阿字野の描き方も決して充分とはいえない。

原作は未読だが、同じ原作者による『花田少年史』もストーリーを大幅に変更することによって、映画たり得たと考える。…それでもなお、あの映画は愚作だと断言したいが、それはそれ、ということで。

声優は『あした元気にな〜れ！』に続き２作目となる上戸彩が主役だが、なかなかに手馴れたものになってきた。神木は今が微妙な時期であり、これ以後については「期待する」とだけ言っておくことにしよう。