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[コメント] ジャーマン+雨(2006/日)

ひとりの破壊的性格をあらわにした少女によって、平穏な街は危険と興奮を秘めた密林へと化す。よし子は日常に火を放つ怪物にしてトリックスターだ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







彼女は、通俗フィクションに於いて不幸な美少女が見舞われるあらゆる不幸に身を晒しながら、それを意に介さないバイタリティを持つどころか、己の境遇をちっとも嘆いたりなどしてはいない。

彼女は哀れな被害者たるを拒み、自ら過激な加害者たらんとするのだ。

子供たちや、ドイツ人や、汲み取り職員や、瀕死の父親までも彼女は思い切りコケにし笑い飛ばす。そこには単なる『ゴリラーマン』に似た少女ではない、どのフィクションにも登場しない傍若無人な野獣が息づいている。だから我々はよし子から目を離せない。彼女が真正のトリックスターだからだ。

そして誰もがよし子と生を分け持ってゆく不幸を楽しんでいるのは、この映画世界がよし子を中心に廻る宇宙だからだ。横浜聡子の原点に見たその正体は、よし子を生み出したことも肯ける怪物的な才人の姿であった。これは侮れない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ペペロンチーノ[*]

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