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[コメント] クローバーフィールド HAKAISHA(2008/米)

きわめて冷徹にしてストイックな、日本のこのジャンルの映画とは趣きを別にしながらも、敢えて「神の目」を捨てることでユニークな視点を得た異色ディザスターパニック。この方法は唯一にして無二である。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







日本のものに限らず、大方のモンスター映画には「神の目」が存在する。そしてモンスターを客観視するために、物語は彼を傍観者たらしめて成り立ちうる立場から語られる。それは例えば彼に立ち向かう超兵器の操縦士であり、国を統べる指導者であり、或いは何らかの超人的な力で彼と語り合う存在である。

しかし、この映画でははっきり言って、何が何だか登場人物が把握できないうちに事態は悪化し、気が付けば一人ずつ友たちが殺され、最後には自分も抹殺されてしまう人物が主人公である。これはある意味コロンブスの卵であり、知ってしまえばなんと言うこともないものの、それを持って手法に感嘆できる作品である(9/11後のかの国に影を落とす不条理感をここに観るのも、勿論鑑賞者の自由だろう)。

そしてそれを眺めるのが素人ビデオなのだから、観客は怪獣を全身くまなくその目で捉えることも出来ず、殺されてゆく主人公達と同じ道を辿ることを余儀なくされるのだ。ゆえに深いドラマも、ラブロマンスもここには存在しない。ただ逃げ惑いつつも、殺されるまでに出来る限りのことをする必死の人間たちがここにいる。その語り口…即ち冷厳なる沈黙がこの物語のツボなのだ。二度と追随者の現われないであろうこのセミ・ドキュメンタリータッチの撮影法をもって、この作品は怪獣映画史にその名を残すだろう。あたかも、『ゴジラ』でその怪獣の行進を逐一解説し、テレビ塔とともに消えていったあのアナウンサーのように。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)DSCH Keita[*] TM[*] 甘崎庵[*] 空イグアナ セント[*] ロボトミー[*] Master[*]

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