コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ノン子36歳(家事手伝い)(2008/日)

「36歳の青春映画」と名乗る映画は、やはりくすぐられる程度の歓喜しか齎さず、夢もなにも抱いていない女の極めて退屈な…つまり実に現実的な作品でしかなかった。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ノン子にとって、愛情を少し抱いた坊やとの「逃避行」などというロマンティックな行為なぞ出来るわけもなく、ゆえに彼女は変化のない、つまらない田舎町から逃れでようとすることすら問題外としか思えないのだ。

なりそこないの大人であるところの自分からすれば、『祭りの準備』考で「蟻地獄」と評した田舎町は、都会の百万分の一くらいの魅力しか持たない存在であり、東京と天秤にかけることすら思いつかない。しかしノン子にとってはそうではなく、ヒヨコ売りで大金を稼ぎ、世界に雄飛する夢を持つ青年の誘いを振り切り、誰も歓迎してくれないはずの故郷にきびすを返してしまう。

つまり、彼女もまた完成されたつまらない大人なのだ。

だからタレント業に復帰し、活躍する夢をいとも簡単に背後に投げ、毎日酒を食らって不平をばら撒きつつも故郷で朽ち果ててゆくのだろう。そうした生活こそ、普通の大人・ノン子の幸福なのだろう。要するに、幸か不幸かまともな大人になりきれない自分には、正直極めて安全で退屈な映画であった。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)のこのこ[*] 死ぬまでシネマ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。