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[コメント] カラフル(2010/日)

今作は「アニメにする必要の全くない作品」であることを度外視すれば少年映画の秀作と呼べるだろう。原恵一よ、何も迷うことはない。実写映画を撮って、私淑するという木下恵介の引きかけたレールを後継、延長させることだ。
水那岐

聊かラストの主人公によるすべての人々の包括と許容は、上滑りにも見えるほどに端折り過ぎた嫌いはあるが、そこに目をつぶれば汚濁も清浄も一からげにして主人公が認める、と言う人としてのありようは少年映画の描写として全く過不足はない。

だが、主人公の見る怪異にしろ、ストーリー上に展開されるありとあらゆる事件にしろ、実写で撮れぬものは少々の例外を除いて皆無だ。唯一撮れない新玉川線の往時の世界に、いみじくもCGが使われているという示唆的な事実を垣間見れば、現在の映画の主流の例を引くまでもなく、この映画はアニメとなるべきではなかった。

自分はアニメは前衛であり、抽象的な表現の発露だと思っている。キャラクターがあからさまに巨石に潰されて圧死しても、次の場面では何事もないかのように会話しているのがアニメの世界だ。意識的に古いパターンを持ってきたが、原が嫌うという「気持ち悪いキャラクター」「気持ち悪い声優の声」というのは前述の例と同一線上にあり、すなわちアニメの特性だ。特性を嫌うのなら実写を撮れ。確かにメガネ女・佐野(宮崎あおい)や好少年・早乙女(入江甚儀)のようなキャラクターを今の映画界に捜すのは困難かもしれない。だが、その取捨選択に携われるというのは映画監督の愉しみでもあるだろう。

映画として描き得る物事をアニメとして描くと言うのは、場合によっては手間がかかっているにもかかわらず手抜きと思われる場合もあることを原恵一は知っておいたほうがいい。

(評価:★4)

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