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[コメント] SPACE BATTLESHIP ヤマト(2010/日)

ヤマトすなわち「田舎芝居」というのが、シリーズを『復活篇』まで観た観客の共通認識(まあ、本当に感動してしまう人もいるようだが)と見做される風潮があるのだが、大事なことは「田舎芝居」にだってパッションは必要だということだ。2時間以上をシラけた気分で画面の前に座らされた気分は、まったくもって最低であった。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







書いている時点で「キムタクが演技していない」との批判をぶつけている方が多いことは感じた。まあ、それに異論はない。こんな軽いノリの古代クンは認め難いし、職業軍人として20年ほど叩き上げられた人物とは到底信じられない。しかし、もっと問題なのはこの物語にオトナの軍人がただのひとりも登場しないということだ。若い戦闘機乗りだって上官にあそこまで逆らって無事で済むものかと思わされるが、この作品では艦長や軍総司令官まで駄々をこねたり、命令違反を日常的にしている体たらくだ。およそリーダーと言える人物がいないのだ。…まして、沖田が「放射能除去装置」があるといったこと自体がウソだという衝撃の発言。これには呆れた。それって「ヤマト」の存在そのものの価値を無力化する暴言じゃないか。

山崎貴の仕事で良かった点といえば、特殊撮影を除けば女性乗組員を増やしたことぐらいではないか。花が増えたと喜んでいるわけではなく、それが自然だということだ。しかし森雪が「古代クン♪」連発のような発言をしている原作以上に、黒木メイサのツンデレぶりは度し難かった。お願いだから使命を帯びた決死の旅路で、くだらぬ痴話喧嘩やベタベタペッティングはやめてくれ。マスコットからエースパイロットに変わっても、所詮美女はステロタイプな「女」でしかないのか。このあたりは脚本の佐藤嗣麻子の底が知れる。

宇宙人については、今更ナチもどきや金髪美女はさすがに現実感はない、と悟ったのか異種生命体にしているものの、「デスラー」の「ヤマトの諸君」にはさすがに肩が落ちる音が聞こえた。ファンサービスのつもりか。そうならばスタッフはとんでもない勘違いをしているといわざるを得ない。古典になってしまった作品にオマージュを捧げるなら、あざとい秋波をファンに投げかけるのではなく、もっと重要な点を踏襲してほしい。

で、ラストシーンを『さらば』と同じ特攻オチにしたことで、もうこの作品については匙を投げた。夢もロマンもあったものではない。西崎義展なきあと、その後を継ぐ者はいないだろうが(松本零士はもはや関われるまいし、かといってSF界で西崎や松本の尻拭いをしてきた豊田有恒スタジオぬえを振り返る人もいない、というこんな寒い時代ゆえに)。…つまり、もうそろそろ本当に「さらば」でいいということだ。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)SAI-UN[*] 空イグアナ[*] 青山実花[*] ナム太郎[*]

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