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[コメント] 劇場版 マクロスF 恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜(2011/日)

例によって菅野よう子の曲目当てで観たのだが、完結までに要した長い期間は無駄でなかったと再認識させられる。すでにこの2011年において死滅状態にあるアイドル・ランカを狂言回しとし、むしろおのれの夢に殉じようとするシェリルと、舞台を捨て少女たちの楯となるアルトを正面から描いたのは正解。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







菅野について、シェリルの歌唱担当であるMay'nは並々ならぬ研究と実験を施してくれたと評し、その結果は映画二部作において一目瞭然なのだが、今回の歌唱シーンをリードする役であるランカこと中島愛の数々のナンバーを聴いて、そうだ、菅野は新人声優だった坂本真綾の育成にも携わった人物だった、ということを改めて思い出した。アイドルポップスの作り手としても彼女は稀有だった。それゆえに「たかが」声優ソングを聴かされる退屈を覚悟していた自分としては、嬉しい裏切りに小躍りする心臓を感じたのだった。

だが、しかし。『超時空要塞マクロス』と同じではもはや観客は納得しない。

正直、中島は演技的にも、歌唱的にも未熟である。ランカがアイドルであるからそんなものであろうことは自明なのだが、やはり歌にも恋にも激しい欲求を剥き出しにするシェリルがTV版のように「永遠の三角関係」に甘んじるとは思えぬゆえに、今回もヒロインとして全力投球して燃えつき、あまつさえ好きな男の愛すらも得て最期を迎えるのは大いに納得させられる。辛酸を舐めた彼女に較べれば、はるかに軽い努力を何十倍にも増幅されて「シンデレラ」になる娘には奥に秘めたパッションが感じられず、感情移入もしがたい。

そういう意味で、太く短く生きたシェリルの物語であることは全くもって正しく、それゆえに彼女をヒロインとして描いた漫画が少女雑誌に載った事実は、さもありなんと思われるのだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)tomonori ひこさん

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