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[コメント] そこのみにて光輝く(2013/日)

周囲八方をきわめていびつに肥大した不幸に囚われた池脇千鶴にとっての救済は、総てを笑劇にし丸め込んでしまえる弟・菅田将暉による癒しなどではなく、畢竟、ただの透明で空虚な入れ物にすぎない綾野剛に丸く収納して貰うことでしか在り得なかったのだろう。綾野は受動的にしか動いていないし、この物語においてはむしろ池脇の存在そのものに救われる彼の印象が強いからこそ、なおさらのことだ。
水那岐

救済の意味においては、菅田のような存在こそが一番ポピュラーな存在だろう。ああいうフレンドリーなだけのろくでなしには何度も逢っている自分であるし、むしろその行動そのものに潤滑油の役割がある以上「ろくでなし」の表現は撤回せねばなるまい。主役であるふたりのほうが、よっぽど世間的に益のある要素を捜すのがむずかしい。…だからこそ、ふたりに通う情感を「愛情」と呼べるのだが(言うまでもなく、愛情は非論理的だ)。

少女のときから好ましい(美しい、というニュアンスとは違う)娘であった池脇だが、ずいぶんと(世間一般的な意味で)醜い女をも演じられるようになったのにはかなり感心させられた。醜い女の美しい恋は常人がそこそこの努力で演じられるものではない。セクシュアルな匂いをまとった上ならばこそ、否応なしに見事と賞賛できるだろう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)緑雨[*] MSRkb けにろん[*] まー[*] 3819695[*] セント[*] ぽんしゅう[*]

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