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[コメント] FOUJITA(2015/日=仏)

やはり自分の観たかったのは稀代のモダニスト画家、藤田嗣治の物語であり、小栗康平の土俗ファンタジー映画ではなかったのだ、と切歯扼腕の思いを噛みしめる。小栗の「引き受け仕事であり、藤田はもともと興味のある画家ではない」との発言がうなずかさせられる出来栄え。特に第2部の小栗節全開の展開にはアクビをかみ殺す連続だった。なお、鑑賞には予習が不可欠。
水那岐

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前半はそれでもさもありなん、という享楽風景だったが、日本に舞台を移すや土俗的腐臭が立ち込めるのは勘弁してほしかった。藤田は戦意高揚画を描くにあたりウジェーヌ・ドラクロワや祭壇画などの構成を下敷きにしたのであって、決して水墨画の世界に埋没したのでないことは判っていただろうに、小栗は化け狐を野に走らせて得々としているのだ。なんやねんとしか言えない。綺麗な田舎風景を連写してごまかせる問題ではない。

そして、大抵の観客は前後編の藤田の立場や心情の変化に解答を求めるだろうに、「自分の任ではない」とは何事か。自分の映画の客はお利巧さんだとでも言いたいのか。後ろの席の女子大生が「村上春樹の小説みたいな投げ捨て方」だと頭を捻っていたぞ。それでなくても娯楽性の乏しい作品であり、りりィ岸部一徳の登場場面がどこか探すのにもひと苦労させられる徹底的な引きの画面にもシラける。

藤田が嫌いならばその半生の映画など引き受けるのはやめてくれ。オダギリジョーのそれなりに似合った演技でどうにか1点加点。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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