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[コメント] 悪童日記(2013/独=ハンガリー)

真正の『地獄でなぜ悪い』。好むと好まざるとにかかわらず地獄に叩き込まれた双生児は、パパとママのいい子である過去を脱ぎ捨てて冷徹で狡猾な大人のオーラを漂わせるに至る。「戦争のせい」などとは言わない。双生児の望んだことは地獄に順応することであり、その目的のためなら裏切りも制裁も厭うところではなかったのだ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







久々に劇映画の鑑賞で肌が粟立った。ただの少年が自らを痛めつけて自分への制裁をおこない、厳格にその身を裁く。友情を結んだ靴屋を嘲笑した娘の顔を焼き、自分たちに地獄を見せた老婆の秘められた愛情を受け取る。そして家族を裏切った姦婦である母を葬り、憧れの対象からただの男に引き摺り下ろされた父を自分たちの安全を試す実験台とする。

これはいったい何事か、少年たちは戦争に狂わされたのか。

半分当たっているがそう断言できるほどふたりは軽薄ではない。これは真っ当な成長物語だ。泣かせならば両親にあんな末路をたどらせはすまい。触媒である戦争のなかで、子供だったふたりは立派に成長したのだ。頼もしい成長だ、というほどに俺は他人事としては見られないけれども、これを断罪できるほどに無責任でもない。ラストの少年たちの大人びたまなざしは何と表現すればいいだろうか。凄絶な成長が、ここには鮮烈に描きつくされている。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)寒山拾得[*] けにろん[*] ぽんしゅう[*] セント[*]

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