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[コメント] 神様メール(2015/ベルギー=仏=ルクセンブルク)

男性的ペシミズムに支配された世界を覆すべく、世界の殻を敢えて割る少女。そして母親の柔らかな反逆。女性的オプティミズムの全肯定はあるいは時代錯誤のようにも見えようが、たとえばトランプとクリントンの対立がこの映画の日本公開時のトピックであることを考えると、充分に切実な問題ではある。ポールヴールドの『シャイニング』パロを観るまでもなくこれは予言的映画だ。
水那岐

**ネタバレ注意**
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この流行に寄り添った邦題は勘弁してほしかった。「最新訳聖書」のタイトルじゃないとこの映画の考えどころは鮮明に見えてこないだろう。

それはさておき、いかにもベルギーという国に生まれたフランス映画(いい加減な…)との香りが匂う作品ではある。日本ならこんな女の子を主役に据えるなら、微笑みを絶やさない「天使のような」娘として撮るだろう。しかしヒロインは年齢(デーモン閣下と大して変わるまい)相応に、物事に動じない立派な女として行動する学究肌の存在である。微笑むなんてことはラストまで数えようにも数えられない少なさだ。そんな信念なしに、父親という悪の権化とは戦うことも叶うまい、という配慮か。この文化的自立は、ともかくも東アジア人とは無縁のものだ。

付け加えるなら、次代の創造主たる女神のキャラも面白い。ちっとも美人ではないオバさんだが、じつに表情がキュートである。こんな女性に律される世界は、どんなにか素直で愛らしい世界になることか。意地悪なツッコミはいくらでもできるが、まずはこんな全能の主の誕生は歓迎してしかるべきだ、と我を張っていたほうが人生には余裕も出るというものだ。彼女もじつに仏映画人の匂いがする。

そういう本家をしのぐフランス風味であることで、本家フランス女優のドヌーヴの影は非常にうすい。まあそれは余談である。無責任な観客は、むしろ少年とエアのキズナが確固たるものかをニヤつきながら想像すればよい。この幼くも老成した関係は、先までの死期に律された懊悩の地球人たちの思いを一瞬で弾き飛ばせる力がある。そんな関係すらも、実にこれまたフランス艶笑コメディを体現するものなのだ。

(評価:★4)

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