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[コメント] 希望のかなた(2017/フィンランド)

作為をあえて「無作為の作為」のように装う必要はない。この作品もまた寓意の産物であり、人々は恥じることなくささやかな善意と己の正しさに従って行動している。右翼の行動もまた「悪意」に従ってブレることがないのは、これがカウリスマキの宇宙内のことだからだ。
水那岐

カウリスマキの良さは、衒いのない啓蒙を行いながら一方でおのれの不完全さを自覚し、自分もまた裁かれるべき人間の独りであるという弱みをつねに露わにしているところだろう。だからこそ彼が描く世界は寓意から抜け出ることはできず、愚直のそしりを受けることを厭わない。でも、その気恥ずかしさを飾る寿司屋騒動などじつに微苦笑を誘い、われらにも痛快なものではないか。フィンランド親父の説教をサーディンを肴に聞くのもなんとも良い。その中に含まれる理想や希望は、その不器用さゆえにストレートに伝わるのだ。これは彼が変節してしまわない限り、たまには聴きたくなる説教節ロックのように自分には受け取られるものだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)jollyjoker[*] けにろん[*] ゑぎ[*]

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