コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 羊の木(2018/日)

デリケートなテーマだから大衆の好奇心に任せてはならない、などと四角四面な能書きを垂れようとするわけではないが、物語は開始2時間を経てまったく焦点を変えることなく「殺人鬼コワイ、サイコパス怖い」との立ち位置に佇立している。ほんの少し理解を寄せてもらったのは訳アリの可哀想な連中だけだ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







エンタテインメントだってことは承知しているが、この国の犯罪者を見る目はこんなものだったんだなあ、と我がことではないながら義憤にかられる。やくざであった昔を悔いている田中泯、愛するがゆえに夫を殺してしまった優香などの同情に値する連中はともかく、「やはり良識あるわれわれが殺人鬼を受け入れられないのはこれゆえだ」とばかりに松田龍平のエピソードを中心に据えるあたりは昔ながらの常識の敷衍だ。ああ、こうすれば確かに盛り上がるさ。でも観る側に安堵を与えすぐに観た記憶を忘却させてしまうこの物語の価値はいったいどこにあるのか。

観客につきつけるプロパガンダを用意せよとがなっているのではない。「上見て暮らすな、下見て暮らせ」というゲスなコトワザを思い起こさせるだけの作劇がアリなのか、ということだ。面白いだけでいいのか。少しは観る者の心に微かなトゲを打ち込むだけの意識は持って当然だろう。

作劇のテクニックのみにプラス1。

(評価:★2)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。