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[コメント] ペンギン・ハイウェイ(2018/日)

「動き」の面白みを前面に押し出したスペクタキュラーな見せ場は、あるいは「ただのジブリのエピゴーネン野郎」と石田祐康を呼ぶ誘惑に人を駆り立てるかもしれない。だが、若く柔軟なスタイルは見逃してはいけない特性だろう。そして作家的には決して教条主義を奉じるクソマジメ男ではなく、健康的なエロスの誇示もする作家性には好感がもてる。
水那岐

だが、それらは今回の作品に至る道程の諸作にみられた特性であり、カメレオンよろしく作風の固定から無縁な石田が、今回手がけたのは会話劇要素も大いに含む物語だった。これについては先駆者たちをゴボウ抜きにするほどのモノではないことは確かではある。だが、決して「子供騙し」に落ち込まない練られた物語であったとは断言できる。児童向け作品とは意識しながら、原作のレトリックは活かした上で演出する手堅さは見事だった。ぶっちゃけ快作とも呼べるものだ。

そのへんに「若さ」を謳うべき側面がある。石田は「名作路線」ばかりでなく、児童向け活劇も決して厭わない柔軟さが十分に感じ取れる。自分は、たとえばポストジブリの劇映画でなく、そういう俗な子供向け作品を見てみたい。「子供に安心して与えられる」ようなモノではない作品を十年はやってもらえないだろうか。そのあとで世界を標的にしても遅くはないはずだ。まだまだ石田に試行錯誤は許される。頑張ってほしいものだ。

(付記)松本零士の苦手な方にも十分楽しめると思うのだが。「お姉さん」は「私はアナタの青春の幻影」とか背中にぞわっとした触感が走るようなことは言わないし。

(評価:★4)

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