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[コメント] あの日の声を探して(2014/仏=グルジア)

映像の力が何にもまして説得力をもつことは、逆の意味では洗脳を観客に強いる力をもつとは言えないだろうか。ハジのような少年が多数死線をさまよわせられたことは事実であろうが、ロシア軍でコーリャのような青年が無慈悲な機械に変えられることを、あたかもファシズム国家の仕業と断ずるようなことはいかがなものだろう。ハジの好きな『ディア・ハンター』メインテーマのメロディが映画の決めつけの愚を物語っている。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







青年兵を改造する無慈悲なロシア軍国主義、少年に恵みを与えるヨーロッパ諸国連合…という図式はいささか受け入れがたい。これは敵軍がロシアンルーレットのプロに若き兵士を歪ませてしまう『ディア・ハンター』の決めつけと同じだ。俺は決してロシアという国を信用してはいないけれど、この映画のロシアはあまりにひどすぎるし、この映画は政治プロパガンダの脚色が色濃いといっていいようにおもわれる。「いや、これは軍隊という存在そのものの批判なのだ」というのはたやすいが、ではイスラエルとアラブにこの脚本を敷衍できるか、といえば難しいだろう。まして原作映画にあって、当時絶対悪と見なされたナチス・ドイツをなぞらえたことを思えば、いまロシアを「攻撃しやすい」がためにこういうメロドラマで裁こうとするのは、ちょうど中国や韓国が絶対悪にされている我が国のたどる道を暗示するようで、やりきれない印象をもたらされる。善意の行動が破滅を生むのも、また人間の行為だ。それは押さえておくべき事実である。

(評価:★3)

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