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[コメント] 月曜日のユカ(1964/日)

馬鹿は死ななきゃ直らない、と言うか、気づかない。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この場合はユカ本人ではなく、恋人の生死の事なのであるが。

ユカの形容として、小悪魔、不思議ちゃんなどといろいろと粉飾する言葉はあるが、はっきり言えば「馬鹿」である。世間の常識からは全くかけ離れた場に身を置き、おのれの信ずる道徳律のみに生きている。そんな彼女は男たちにとっては可愛く見えるためさかんにモーションをかけ、ユカもそんな男たちの胸に喜んで身を委ねる。

彼女にとって、自分のみを愛し、また愛されたいと願って現われた青年の存在はさほど重要ではなかったろう。だが、彼が望む「一緒に目覚め、一緒に朝食を食べる」という生活は、ユカの「パパ」に望んだ「日曜に元町に一緒に出かけ、人形を買ってもらってともに喜び合う」生活と通底していた…彼女は気づかなかったが。だから青年がともに暮らすアパートを借りようと持ちかけた時、ユカはその代金を男に抱かれる代金で払うと決めたのだ。青年はその言葉に憤り、また悲しみ、相手の男を殺そうと出かけていった挙句、事故死する。

青年を殺したのは、はっきりとユカである。

だからユカがパパに復讐するのは筋違いにしか見えない。ほんとうの恋を教えてくれた青年の好意をユカは踏みにじっている。そこから真人間になるチャンスを見逃した彼女は、これからも今までと同じ生活を送ってゆくだろう。その責任はパパたち男にはない。おのれにあるのだ。ユカは恋のほんとうの意味を知りかけたが、やがて忘れてしまうのだろう。

冷静に見れば、画面上のお遊びはすでに新鮮味を失っているが、昔の横浜の小洒落た雰囲気は良かった。それと、娘をあんなカタチに育て上げた北林谷栄のいかにも「母ちゃん」らしい存在感には感心。よって1点おまけ。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)づん[*] セネダ[*]

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