[コメント] ハローグッバイ(2016/日)
あれほどにドロドロした内面を眼前にぶちまけられたら、誰だって顔色を変えてたじろぐ。だが、雄々しいこのヒロインたちはそれが自分の器におさまることを知っており、そこから友情を育むのだ。菊地健雄、馬鹿にできない演出家だ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ヒロインたちは両方とも、自分からすれば嫌な娘だ。人を見下すことを何とも思わず彼女の利用を重ねる娘。そしてもう一人はといえば真面目で控えめそうだが、自分の中のマントルの沸騰具合を察知しており、万引きを繰り返して自分を慰める娘だった。こんな二人では自分を重ねるのははっきりとイヤだ。そう思い、残された時間だけこの作品を惰性で眺め、耐えられなくなったら観るのをやめようと心に決めた。
そんな二人の内面を掘り下げ、以下気持ちよく演出術を見せつけたことで、菊地監督の愛娘たちが愛すべき人間にイメージを変えてゆく過程は見ものとなった。「委員長」のあだ名を返上し、おのれの小悪行を発表することで周りに敬遠される道を選んだ娘と、冷たい学友たちを見限ってその娘との「無言の友情」を結んだ娘。その明快な男気は素晴らしい。SNSの恐ろしさの描写は少々やりすぎではあったが、結論の価値は揺るがない。脚本もじつに明快であり正直であった。『ハローグッバイ』、実に含蓄ある題名だ。ふたりの少女が交し合った無言の挨拶だ。
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