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[コメント] HERO(2002/中国=香港)

銀杏の葉を巻き上げて天空を舞い、ふたりの美貌の剣士が激戦を繰り広げる…その木の葉が一瞬にして真紅に染め上げられる瞬間のファクト。あるいは、水滴が水面に弾ける瞬間の剣戟。CGは無骨な武侠映画のためよりも、こうした「耽溺させられる美技」を描き出せる作品のためにこそあるべきなのだと敢えて断言したい。
水那岐

物語を支配する理屈は素直に肯けるものではない、むしろ陳腐だ。敵たる刺客たちを百年の知己のごとく理解しているらしい秦国王は、どう見ても大した人物には見えないし、その言葉もなにか空しくきこえる。チャン・ツィイーは嘘のなかでこそ存在感があり、「現実」のなかではおよそ所在なさげだ。だがそれとてここまで美しい闘いの価値を汚すものでは決してない。

天空を覆わんばかりの驟雨の如き鏑矢のなかを、伝説のなかにしか生きられぬつわものたちが舞い、また剣を交える。これに理屈をつけることこそ野暮だ。ただフィルムに焼き付けられた超人的な美技を旨酒としてゆったりと味わう。こんな映画もあっていい。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (9 人)ゑぎ[*] HW[*] ゼロゼロUFO[*] ノビ[*] ナム太郎[*] Osuone.B.Gloss[*] トシ[*] にゃんこ[*] 甘崎庵[*]

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