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[コメント] 時計じかけのオレンジ(1971/英)

梅毒で聴覚を無くしても、悪戦苦闘の上で演奏し、人間の魂のかなりの奥まで到達したベートーベンという音楽家と同じく、キュープリックもこの「時計仕掛けのオレンジ」で、原作の予言的な書物を前人未到の鬼作とした。現代のホームレス襲撃事件を25年前に予言していたとは。
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原作はユリシーズのジョイスを想起させるような、不思議で、ハラショーな言語を操るアントニー.バージェイスのimaginationも天才的なのだが、この 「映像が不可能であると思われる作品」をキューブリックは、まず、4次元的で、不可思議で、「かっちょいい」グルービーな、麻薬的な作品にまで、作り上げている。ウォルター・カルロスによって大胆にアレンジされたベートーベンの「第9」、やエルガー、ロッシーニ、テリータッカー、エリカ・エイゲンなど、彼のプロジェクトだから成し遂げた、クラシック音楽の使い方のアイデアの数々。聞くところによると、海外の作品はストーリー・コンセプトに、数十人もの専門家が、けんけんがくがく、討論して、一つの作品を総合的に創造していくらしい。日本とは大違い。この映画は、妙な表現だが、古典的なパンクとも言うべきところに到達してしまった。つまり、絵でいえば、古典的な手法をすべてマスターしたダリとかピカソが、ついには、ダダイズムとかシュールにまで到達してしまったのと同じだ。現代を、描くには、やはりひとりの個性的で、独断的な才能を必要としたのだ。こむずかしい映画でもなくて、ファッションとして見ても、この映画はすごい。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)草月 chokobo[*] Kavalier Cadetsファン改めジンガリーLove[*] ドド[*] ina

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