[コメント] 仕組まれた罠(1954/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
劇中、本人が言う「私は悪女なのよ」そして「16歳の時、金持ちオーエンズさんに目を付けられ、関係を持ち、その時病弱奥さんの後釜に座ろうと思った。でもダメだった。彼はしっかりしているわ」
これを考えてみるに、ダメで当然だろう。16才の小娘と遊びはしても、結婚まで考える大人の男は普通は居ない。あの時代の女性には、結婚しかなかった、という事もあるが、やはり、幼な過ぎる。
また別のシーンでジェフに「私の愛の為に人を殺せるのは、カールだけね」と言う。これは額面通りには受け取れない。自分を悪女と言って悪女ぶった、幼い娘の恨み言、初めて愛を知った相手(ジェフ)への恨み言というのが見え隠れする。
本来は素直な娘なのだ。
そもそも、オーエンズさんに会いに行くのを、嫌がったのは彼女だ。それを「夫の手助けをするのは、妻の務めだ」と無理強いしたのは、夫カールではなかったか。いや、その前に、失職したカールに「大丈夫よ。私が働くから。」と健気な事を言ったのも彼女だ。
彼女の本当の姿。歳は大人になったが、教育も受けずに育ち、考えも幼い素直な女なのだ。
そして愛を捧げようとしたジェフに受け入れてもらえず、あんな結果になるのは必然だろうが、何と可哀想な事か。
原作はゾラだ。ありのままをとらえる自然主義(リアリズム)を標榜したゾラ。プロレタリア、下層階級の人々を初めて主人公にして小説を書いたゾラ。そんなゾラの描く下層階級の悪女は、内面に素直な心を持った悪女だろう。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (1 人) | [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。