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[コメント] 父ありき(1942/日)

まさに佳作と呼ぶにふさわしい作品だ。
KEI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







聞きしにまさる録音の悪さで、セリフが聞き取れないのには往生した。

最初、ボート事故が出てくるので 「真白き富士の嶺」(明治43年江ノ島ボート転覆事故)か、と思ったが関係はない。小津監督がストーリー展開上参考にしたかもしれないが。

笠智衆の登場。口ヒゲ、アゴヒゲ、もみあげと何となくイチロー(野球の)に似てはいないか?  それはいいとして、長いセリフになると棒読みになるのは・・・後年迄ずーっと変わらないが、特にこの作品では棒読みだ。彼の良さが出る為には短いセリフの方が良いと思う。が、ひょっとすると長セリフの内容は軍部受けする様な物が多かったので、ワザとしたのかもしれない?もしそうなら、それこそ役者だ。

もう一人の主役、佐野周二演じる息子。何という立派な息子だろう!うちの息子とはえらい違い!とはいうものの、親一人子一人でこんな境遇にいたなら、こういう風に育つのかも知れない−時代とは関係なく。  この作品を観て、余りに理想すぎるという人がいるかもしれないが、それはそれで良いのではないか。  現実を鋭く直視するのも映画なら、こういう理想も世の中にはあるんじゃないかというのも映画である。

タイトルは「父ありき」となっている。「息子ありき」ではなく−当然ながら。飄々とした父−笠智衆が演じるからそう見えるのかもしれない。だからこそそう見えない為にヒゲを生やしたのではないか?−。この父は何かスゴい事をやりとげる訳でもなく、波乱万丈の人生をおくる訳でもない。が、私の人生は一生懸命生きてきた人生、悔いのない人生と彼は最後に語るのだ。

しっかりとした手応えのある親と子の結びつき、更には一人の父親、男の人生までも見せてくれる、まさに佳作と呼ぶにふさわしい作品だ。

(評価:★4)

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