[コメント] 山の音(1954/日)
水木は原作の多くのファクターを取り除き、菊子にのみ焦点を当て、自分の主張をはっきりと語っている。成瀬は、その路線を更に強調。さすがに女の描き方は上手い―川端より上手い(笑)。菊子の物語になる事によって、原作とはまた違ったものが出来上がった。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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失われた原作のファクターの中で大きなものは2つ。
1つは‘山の音’。これは、人が死ぬ時魔物が山を駆け回る音が聞こえる、という言い伝えから来ているが、主人公はそれを聞いて自分の死→老いを自覚する。この老い、物忘れとか、ボンヤリとかは全編に出て来る。
もう1つは、主人公の娘・相原に嫁いだ房子の家庭。原作では相原は麻薬の売人のような仕事をしており・・・と書けばお分かりの様に、最後はハチャメチャになり、房子は完全に出戻って来る。
上記のような話の中で、菊子の中絶は大事件にもかかわらず、インパクトは弱い。更に原作のラストは離婚ではなく、元のさやに納まるという形だ。
川端も昔の男なのでこういうラストにしたのだろうが、菊子という人物を創造し、‘菊子(女)は自由だ’という言葉を多く使っている点等はさすがに小説家だと感嘆する。
とはいうものの、水木は菊子にのみ焦点を当て、離婚を恐れない脱皮した新しい女を創造した。そういう点で、この作品はタイトルは同じだが、川端の小説とは又違う作品になっていると思う。
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