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[コメント] しとやかな獣(1962/日)

よく考えられた密室劇。
KEI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







これを密室劇にした理由は何故だろう。それは、この奇妙な父親と母親を強調する為だろう。そうでなかったら、若尾文子が如何に妖艶だといえども、単なる犯罪モノに終わっていた。この家の中を見続けることによって、この2人の面白さが、浮かび上がって来る。

元海軍中佐の父親は、人を煙に巻く論理展開の会話が実に面白い。が、見落としてしまいそうなのが、「お父さんのおっしゃる通り」が口癖の母親だ。しとやかで大人しい彼女が、本当はこわい獣なのかもしれない。

ラストで、すべてが終わったことを知った時の彼女は、騒ぐでもなく、ただ振り返って、家の中を、息子を娘をそして夫を静かに見つめる。何を考えているのか?そんな彼女が一番コワい。

犯罪劇として上手いのは、船越英二の自殺。伏線(若尾が言う「一番困るのは彼(船越)の自殺。警察が介入して来るから。」)があるので、死ぬのは分かっていたが、本人を登場させ、ここで自殺させるとは思わなかった。

登場させたのは、彼が言うセリフ「絶対、彼女(若尾)に迷惑が掛からないように(自殺)します」で観客に二ヤリとさせる為と、その自殺を母親に見せ、その時彼女が取る態度―本当の姿―を観客に見せる為ではなかろうか。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ゑぎ[*] 寒山拾得[*]

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