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[コメント] 運命じゃない人(2004/日)

アイデアだけの映画ではない。ダイアログ設計とキャラクタ演出の妙。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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既にご指摘のある通り、時制制御と視点転換で一つの物語を重層的・複眼的に見せていく、というアイデアはけっして斬新なものではない。むしろ最近では少々見飽きてきて食傷気味なくらい。だが、この作品はそういったアイデアだけの映画ではない。アイデアを超えた魅力を湛えている。

その魅力を支えているのは、けっして有名とは言えない俳優たちが演じる登場人物の、よく作り込まれたキャラクタの魅力。そして彼らが織りなす会話のもつ魅力。

レストランで山中聡中村靖日をユーモラスに叱咤激励する会話。手練手管に長けた板谷由夏と山中が互いの腹を探り合うプロフェッショナルな会話。中村と霧島れいかのぎこちなさが解けない敬語での会話。山中をビビらせる組員、拍子抜けさせる組長という対比で見せる緊張と弛緩が利いた会話。どれも魅力的。

そしてこれらの会話が展開されている裏側では実はまったく違った物語が同時進行しているのだった…というギミックが仕込まれているからこそ、アイデアが効果を生むのである。

会話がいいと書いたが、役者たちの声もいい。特に山中のかすれ気味なハイトーンボイスが印象的。そして、出演者中唯一名前の通った俳優である山下規介。大昔の「象印クイズ ヒントでピント」のレギュラー解答者としてのイメージしかなかったけど、こんな芸達者な役者になっていたとは!

(評価:★4)

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