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[コメント] 静かなる決闘(1949/日)

黒澤自身が失敗作と認めている作品らしい。確かに主張がボケていてわかりにくい点も感じたが、「失敗作」でありながら、ここまで見応えがあるというのはさすがと言うべきか。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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主人公に病気をうつすことになった中田(植村謙二郎)の描き方に違和感を感じた。あまりに愚かで同情すべき点が皆無。彼のほうにも多少エクスキューズを与えてやっていれば、もう少しやるせなさ、切なさを感じることができたろうに。

なんでも、もともと菊田一夫の原作では、主人公の医師自身が梅毒により発狂してしまうというラストだったところ、本作制作時には医療水準が向上したため梅毒で発狂に至ることは現実にはありえず、中田が死産した我が子の姿を見て発狂するというラストに差し替えざるを得なかったとか。そのあたりで脚本に若干無理が出てしまったのか。

それにしても出色なのは、やはり千石規子演じる見習い看護婦の造型だろう。終始けだるい雰囲気を振りまきながらも、次第に生きる歓びを取り戻していく様子が巧みに演じられている。クライマックスの三船の激白シーンも良い。ふたりがぐちゃぐちゃな醜い顔になって泣くのが良い。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

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