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[コメント] 天国と地獄(1963/日)

前半と後半では全く別の映画。そして「高低差」と「移動」の映画。
緑雨

前半はほぼ権藤邸の室内のみで繰り広げられる心理サスペンス。特急こだまでのライヴ感溢れる身代金アクションを挟み、後半は主役が警察に移り一転じりじりとした時間の流れの中でパズルのピースを埋めていくようなミステリ兼職業映画となる。

そして視点を換えれば、これは「高低差」の映画であり「移動」の映画である。横浜浅間台の丘に建つ邸から見下ろす、逆に街から邸を見上げる視点と構図の強い印象。江ノ電沿いの急坂を警察車輌がゆっくりと登っていくことで生じる焦燥感。黄金町の歓楽街や貧民窟を延々と彷徨う犯人、それを追い続ける刑事たち。犯人の動機の掘り下げは浅いとは思うが、空間構造と時間の緩急を強烈に作り込むことで押し切っている。やはり傑作。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ぽんしゅう[*]

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