[コメント] 彼岸花(1958/日)
お喋りで厚かましくも憎めない浪花千栄子と、人懐っこい満点美人の山本富士子。この母娘のキャラが、映画全体にカラッとした明るさをもたらし、もはや化石としか思えない家父長絶対主義者・佐分利信の仏頂面や有馬稲子が醸し出す薄幸オーラを中和する。
佐分利にしても、浪花をうまくあしらったり、山本に鼻の下伸ばし気味になったりするあたりに人間味が滲み出るのだ。
ファーストカットは東京駅。やけに新婚が多いな、これから天気が荒れるみたいだぜ、などという駅員の無駄口が物語に対するよいマクラになっている。一瞬だけ映る強風警報の看板が、赤白黒の3色でデザインされていて、これがタイトルロールのカリグラフィーとシンクロしているのが洒落ているなと気付いた。
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