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[コメント] ダークナイト(2008/米)

アクションよりもむしろ”世界を描く”ことに注力している志向が見て取れる。そこが凡百のハリウッド大作との分界点なのだろう。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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そして、アメコミのイマジナリーな舞台を借景していながら、徹底的にリアリズムを追及するというチャレンジングな試みが成功している。ヒース・レジャーのジョーカーについてはすでに語り尽くされているが、冒頭の銀行強盗シーンの鮮やかで強烈なインパクトは改めて特記しておきたい。アーロン・エッカートも悪くないが、彼のトゥー・フェイスへの”変身”過程やコインの裏表云々にはアメコミ的要素の残存が感じられる。勿論、だから駄目だということはないのだが、この作品の色調にはやや親和していないような印象も受けた。

「アクションよりもむしろ…」と書いたが、実際には、観る者に考える暇を与えない、正気とは思えないペースで繰り出される見せ場の連続、でもある。このペースに巻き込まれると、登場人物の誰がどういう意図で行動しているのか、それどころか誰がまだ生きていて誰がすでに死んでいるのかすらどうでもよくなってしまうほど。映画を観るにあたり「ストーリーを追う」ことに重きを置かない立場からすると、こういった”体感”はたいへん心地いい。映画を観てから一ヶ月ほど経った今頃になってこの文章を書いているのだが、正直プロット展開など詳細は思い出せない。が、それでも、この映画に流れる空気やゴッサム・シティの質感、そしてジョーカーを始めとするキャラクタは、一生印象に刻まれ続けるだろう。そういう映画こそが優れた映画なのだと思う。

(評価:★4)

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