[コメント] 愛を読むひと(2008/米=独)
豊穣なる肢体に少年は溺れ、女性は胸にぽっかり空いた穴を埋めるかのように少年を受け容れる。官能性と隠微さを削ぎ落した不思議と健やかな情事。
逢瀬の舞台となるアパートメントや路面電車の重厚で質素な情景がよい。
中盤のナチス裁判には、ホロコーストが未だ”歴史”ではなく”苛烈なる過去”であった当時の時代性がフィルムから立ち上がっていて、これもまた秀逸。
惜しむらくは、「本を読む」という行為が彼女の生き様に与えた影響を、記号的な意味を超えた映画的感情として表現し切れていないところ。やはり、文学と映画はとことん喰い合わせが悪い関係にあるのだ。
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