コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ノルウェイの森(2010/日)

基本的には原作小説の世界に殉じている感があるが、風土の表現については独自性を感じる。ワタナベが緑の部屋を訪れるシーンで窓外に雨が降りしきる光景はまるで亜熱帯のよう。
緑雨

或いは、ワタナベと直子が身を晒す猛烈な強風、一面の銀世界、荒波に襲われる岩場。

一方で、村上作品特有の現実感の薄さが絶妙に映像表現されている。原作小説は、村上作品の中では比較的時代や場所の設定が明確になっているほうだが、それでもやはり浮世離れしている。水原希子の科白回しについて何かと云われているが、松山ケンイチにしても菊地凛子にしても、あんなふうに喋る人は現実世界にはまず存在しない。が、あれが本作においては適切なダイアログの方法なのだという気がしてくるから奇妙なものである。(ところであの喋り方は誰のディレクションによるものなんだろう?まさかトラン・アン・ユンが指導したわけではあるまいに…)

それにしても水原は魅力的だ。もともと緑とワタナベの会話の軽妙さが原作小説の魅力の一つなわけだけど、和製オドレイ・トトゥとでも呼びたくなる(ハーフだけど)ような彼女のユニークなフォトジェニックさが、全共闘世代のノスタルジーという作品全体に通底するトーンに新鮮な彩りを与えている。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)りかちゅ[*] 3819695[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。