[コメント] オン・ザ・ミルキー・ロード(2016/セルビア=英=米)
ガチョウの群れが浴槽で血浴びして大量の蝿が集る、クリアな画面で見せるこの狂気の映像にいきなり心掴まれる。
その後も、ハヤブサの鳥瞰視点とバードストライク、人を噛む巨大時計、耳削ぎと縫合、ミルクを啜る蛇…映画的興奮を唆られるシーンを挙げたらキリがない。
初めて観た俳優エミール・クストリッツァのシブい面構え、女神がそのまま齢を重ねたような『モニカ・ベルッチ】の抱擁感も好いのだが、前半部はスロダボ・ミチャロヴィッチの魅力の虜になる。ヴィジュアル、身体性、そして酒宴のシーンでの妖艶さと暴れっぷり。
正直、逃避行に入ってからは前半部の興奮がやや醒めてしまうところはあるのだが、川底のシーンなんかは『アンダーグラウンド』にも通ずるクストリッツァの真骨頂だし、クライマックスの牧羊場のロケーションと地雷原のカタストロフィの造型は圧巻。
与太話的寓話を暗喩として人間社会のリアルに投影する語り口に感服する。
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