墓、美術館、古ホテル、金門橋…巡る舞台も皆美しく、神秘的に表現されている。

そして、あの鐘撞き塔のある修道院。 中盤の落下シーンの直後に真上に近い俯瞰で塔を映したカットがある。 画面の真ん中に塔が大きく捉えられ、左側には屋根に落ちたマデリンを助けようとする修道僧たち、右側には建物から急いで立ち去ろうとするスコティの動きを配したダイナミックな構図。 これには見惚れた。

それから、スコティが初めてマデリンの姿を見ることになるレストランのシーン。 カメラがパンしていくと、大勢の客の中にエルスターと食事するマデリンが現れる。 やがて、カウンターに一人座るスコティにマデリンが近づいてくる。 真横からのマデリンのワンショット。 アップにまとめた金髪の細部まで覗くかのようなズームイン。 この艶めかしいカメラワーク！

ジェームズ・スチュアートはけっして演技の上手い俳優とはいえないけど、一途というか思い込みが激しいというか、パラノイアなキャラクターにはぴったり嵌る。 冒頭の転落（しそうになる）シーンで、下を見て恐怖に襲われた際の驚愕の表情とか。