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[コメント] 斬る(1968/日)

傑作。なんと見事な脚本だろう。これだけの数の登場人物にそれぞれ見せ場を与えて、めまぐるしく動いていく情勢をまとめ切るとは。『ロード・オブ・ザ・リング』では3時間×3作かかったんだぞ。
緑雨

**ネタバレ注意**
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武士の世界に愛想を尽かしてやくざ者に身を転じた男と、百姓生活の貧窮から成り上がろうと侍になることを目指す男。正反対のベクトルを持ちながら初対面から互いに通じるものを感じたふたりが、敵味方に分かれながらも最後には目指すべき真理を共有してゆく。

その主軸となるふたりに絡んでいく各陣営に散りばめられた脇役たちの魅力的なこと。特に、岸田森演じる浪人部隊の組長の無常感が堪らない。

もちろん脚本だけの映画ではない。アクション活劇としても十分に魅力的なのがまたスゴイ。カットがいちいちカッコイイし、音楽も西部劇っぽくってマッチしてる。

オープニングの荒れ果てた宿場町は『用心棒』を髣髴とさせ、権力に反旗を翻す若侍に流れ者が力を貸すストーリー展開は『椿三十郎』を連想させる。黒澤の時代劇代表作2本のファクターを併せ持ち、さらにダンディズムの点ではそれらの上をいく。傑作。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] sawa:38[*]

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