コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] おおかみこどもの雨と雪(2012/日)

作品内リアリティレベルのコントロールがうまくいっていない、いやむしろ、場面によってはそれを放棄すらしているように思える。しかし、そんなことはさほど重要ではない。
movableinferno

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







あそこがおかしい、ここの辻褄があわない、と挙げはじめたらキリがない。そして、そんなことはその映画あるいは登場人物たちを好きになってしまえばあっさりと無視できてしまうものだ。

無視できないのは、映画に心を掴まれていないからだ。わたしにとって、「時をかける少女」以降の細田監督作品はみんな同じ手触りで、それは、今たいへん的確なたとえが思い付いたけど書くのを躊躇しつつこれ以上のものは思い当たらないのでやっぱり書くけど、コンドームをつけているような感じなのだ。(あーあ書いちゃった)情感がヴィヴィッドに伝わってこない。演出はたいへん繊細になされているのだけれど、それを「なるほどそういう意図ね」と頭で受け取ってしまう感じなのだ。

ただし例外はあって、ゴミ回収車が“彼”の遺体を無造作に呑み込んでいく非情さや、川に流された雨の血の気を失った身体の禍々しいほどの青白さなどは、とても生々しく印象に残っている。

思うに、細田監督は叙情詩よりも叙事詩を描くべき人なのではないだろうか。人物の芝居や台詞よりも、状況や様子に語らせることに長けている人なのでは、と思う。次回作は、そんな感じでゾクゾクするホラー映画を撮っていただければ嬉しいな、と思う次第です。

(2012.08.08@新宿バルト9)

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)MSRkb ペンクロフ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。